</p> 第三点として、「そうありたい自分」や「そう見られたい自分」を作り上げる、「自己実現の欲求」が挙げられる。特に女性は、「美への欲求」や「変身願望」も含まれており、自分の魅力を最大限に際立たせるためのファッション採用を行っている。ファッション採用時の例としては、コンプレックスであるボディーラインを隠す着こなし方をしたり、特別な日におしゃれをして出かけること等が挙げられる。6 f7 H& K) L5 f, z: D7 ^+ t+ ]% w
仮説ではあるが、現代の若者は、「同調性の欲求」、「差別化の欲求」、「自己実現の欲求」の3欲求が他の年代の人々と比較して高いといえると私は思っている。そのため、流行を最重要項目にしないまでも現在のトレンドを把握し、「個性化」を意識したファッションをすることによって、他人との違いを演出するという消費傾向があると予想している。この3欲求をさらに詳しく見ていくために、従来の理論を整理した鈴木裕久の5つの動機を紹介することにしよう(川本、1981、pp129-130)。
9 `* [+ T/ w0 B7 S5 n (1)自己の価値を高く見せようという動機
U9 T5 _: G6 Y" z 個人の流行採用の背後には、自分が高い価値をおいている目標を達成するための道具としてそれを用いようという動機が隠されていることが多い。社会の中で自己の地位を高めることや、異性による注目や関心を獲得することが例として挙げられる。
% L- Y* k$ U% @# R, x. Y: w (2)集団や社会に適応しようという動機
& b: U& C, `9 e! G 個人はしばしば、適切な行動の基準として流行を利用する。流行を採用することによって、自分が適切な行動をとっているという安心感を得ると同時に、周囲に対しても適切な行動を取りうる人間であることを証明できる。流行の採用は、社会や集団に適応するための簡単かつ容易な手段として機能するのである。, N7 V: v% X& y# k
(3)新奇なものを求める動機) y8 ~& O/ k; d) Z8 Q$ A% n# T+ H0 l
個人には、自己をとりまく環境から情報を得ようとする欲求や自分自身に対する刺激を求めようとする欲求、すなわち「好奇心」と呼びうる基本的欲求がある。流行の採用は、倦怠感を打ち破るための手段である。/ l! B+ Z9 I6 t
(4)個性化と自己実現の動機
) j) F' L; b" M9 R8 o: ^4 f 自分を他人から区別したいという欲求。また、流行を感情のはけ口や、意志表示の手段とすることがある。
2 ]( R; B1 l9 m7 K" j4 E (5)自己防衛の動機
* z- ^$ G7 a, n4 ]2 [ 個人は社会の中で様々な束縛を受け、内的コンフリクトを抱えている。このようなコンフリクトを解消し、自我を保護するために、抑圧された感情のはけ口として流行の採用を行う。
2 A0 Y8 |: S1 y V+ o" ~" R- S このように、流行採用には様々な動機や要因が関わっており、複数の要素が影響し合う事によって採用に踏み切らせる場合が多い。特に大きな要因となっていると予想される、イン??パーソナルコミュニケーションとパーソナル??コミュニケーションのそれぞれが、流行採用にどのような役割を果しているのかをこれから考えていくことにする。
% ~: {, S; ` u3 g/ ` p5 m9 X 第2節 ファッション雑誌の役割6 m' [& C; [+ e6 q# }
現在の流行現象の成立過程において、マーケティング情報は重要な要素の一つとなっている。これから、情報の中でも特に大きな効果を挙げているファッション雑誌が流行現象に果たす役割を考察していきたい。1 A' g) |1 a1 G+ c$ d
ファッション雑誌の役割は、当然商品である服や小物を紹介することである。しかしそれと同時に、服を着てポーズをとったモデルを全面的に打ち出すことで、「そのファッションを身に付けた自分」というイメージをも消費者に紹介する役割をも果たしているのである。特に雑誌で掲載されるファッションメーカーの広告は、服というよりもショップイメージを印象づけようとしていると感じる。実質よりもイメージの良さが消費者に対してアピールするものだと、マス??メディア側は考えているのだろうか。 I7 T |1 d$ n7 O# W6 N7 u S
1 g+ j0 X+ s2 Q+ V$ O 現在、数多くのファッション雑誌が発刊されており、年齢層や社会的地位(学生·OL·主婦等)には違いがあるが、若い女性をターゲットにしたものは非常に多く、その分情報量も莫大になっているという現状にある。ところが雑誌による情報は、かなりの程度まで共通性を持っており、それらの情報によって養われた「感性」も自然に同質性を持ってしまう。# O5 Q& c% Y9 s$ \. f7 i1 h
しかし、「個人」としての消費者は、同質性の中の差異を目指して自分だけの「個性」をより強く打ち出す可能性を秘めた情報を選択しようとしている。これは、消費者の心の中に、「同調性の欲求」と「差別化への欲求」が同時に存在しているからである。一方のマス·メディア側も、服よりもイメージを重視するのと同様に、「個性」を意識した消費者に合わせた展開を広げている。ファッション雑誌では、一着の服の着回し方や、身体のコンプレックスをカバーする着こなしの提案にも力を入れている。雑誌の表紙にも、「着やせ」、「この○着でワンシーズンを乗り切る」、「スタイル良く見せる着こなし方」というタイトルが目につく。この状況から、現代の若者は流行を意識しながらもそれ以上に、自分に似合う服や、スタイルをより理想的に見せてくれる服という、自分にとってのロングセラー商品を求めていることが伺える。熊沢も以上を踏まえつつ、著書『ロングセラーに帰る消費者たち』の中で、これからのニュー·マス·マーケティングの特色を3点挙げている(熊沢、1989、p104)。 |