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[职称日语C级] 职称日语C级阅读素材:《硝子戸の中》

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发表于 2012-8-15 22:57:32 | 显示全部楼层 |阅读模式
  硝子戸(ガラスど)の中(うち)から外を见渡すと、霜除(しもよけ)をした芭蕉(ばしょう)だの、赤い実(み)の结(な)った梅もどきの枝だの、无远虑に直立した电信柱だのがすぐ眼に着くが、その他にこれと云って数え立てるほどのものはほとんど视线に入って来(こ)ない。书斎にいる私の眼界は极(きわ)めて単调でそうしてまた极めて狭いのである。! Y/ G' c6 M  \& ?+ W( {) o+ p
   その上私は去年の暮から风邪(かぜ)を引いてほとんど表へ出ずに、毎日この硝子戸の中にばかり坐(すわ)っているので、世间の様子はちっとも分らない。心持が悪いから読书もあまりしない。私はただ坐ったり寝たりしてその日その日を送っているだけである。9 W( k( p( T/ l) \
  しかし私の头は时々动く。気分も多少は変る。いくら狭い世界の中でも狭いなりに事件が起って来る。それから小さい私と広い世の中とを隔离しているこの硝子戸の中へ、时々人が入って来(く)る。それがまた私にとっては思いがけない人で、私の思いがけない事を云ったり为(し)たりする。私は兴味に充(み)ちた眼をもってそれらの人を迎えたり送ったりした事さえある。8 c" p+ f6 f' R' R1 h: d) P7 U  D
  私はそんなものを少し书きつづけて见ようかと思う。私はそうした种类の文字(もんじ)が、忙がしい人の眼に、どれほどつまらなく映るだろうかと悬念(けねん)している。私は电车の中でポッケットから新闻を出して、大きな活字だけに眼を注(そそ)いでいる购読者の前に、私の书くような闲散な文字を列(なら)べて纸面をうずめて见せるのを耻ずかしいものの一つに考える。これらの人々は火事や、泥棒や、人杀しや、すべてその日その日の出来事のうちで、自分が重大と思う事件か、もしくは自分の神経を相当に刺戟(しげき)し得る辛辣(しんらつ)な记事のほかには、新闻を手に取る必要を认めていないくらい、时间に余裕をもたないのだから。――彼らは停留所で电车を待ち合わせる间に、新闻を买って、电车に乗っている间に、昨日(きのう)起った社会の変化を知って、そうして役所か会社へ行き着くと同时に、ポッケットに収めた新闻纸の事はまるで忘れてしまわなければならないほど忙がしいのだから。1 B& @7 y- x) O6 r0 s* w) c% f* ^
  私は今これほど切りつめられた时间しか自由にできない人达の軽蔑(けいべつ)を冒(おか)して书くのである。8 G4 Z2 m, }+ C2 t% E+ R! U
  去年から欧洲では大きな戦争が始まっている。そうしてその戦争がいつ済むとも见当(けんとう)がつかない模様である。日本でもその戦争の一小部分を引き受けた。それが済むと今度は议会が解散になった。来(きた)るべき総选挙は政治界の人々にとっての大切な问题になっている。米が安くなり过ぎた结果农家に金が入らないので、どこでも不景気だと零(こぼ)している。年中行事で云えば、春の相扑(すもう)が近くに始まろうとしている。要するに世の中は大変多事である。硝子戸の中にじっと坐っている私なぞはちょっと新闻に顔が出せないような気がする。私が书けば政治家や军人や実业家や相扑狂(すもうきょう)を押(お)し退(の)けて书く事になる。私だけではとてもそれほどの胆力が出て来ない。ただ春に何か书いて见ろと云われたから、自分以外にあまり関系のないつまらぬ事を书くのである。それがいつまでつづくかは、私の笔の都合(つごう)と、纸面の编辑(へんしゅう)の都合とできまるのだから、判然(はっきり)した见当は今つきかねる。
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